「…で、なんでしょうか?」

「まなみってさ…好きなやついねぇの?」

「えっ…?」

いきなりたかやくんが
問い掛けた。
思いもしない質問だったので
私は戸惑った。

「好きなやつ、いねえの?」

「…いませんよ」

いるけれど、嘘をついた。

「…気になるやつも?」

「は、はい」

「ほんとに?」

たかやくんは何度も
聞いてきた。

「いませんよ!」

「そうか…」

たかやくんは下を向いた。

「…俺とお前はさ、23と16で、歳結構離れてるからさ、恋とか無理だろうけどさ」

「…」

「思いは伝えたほうがいいぞ?」

「えっ」

たかやくんは何を言ってるんだろう?
たかやくんと私?
疑問ばかりだった。

「相手に彼女がいようとさ」

その言葉で、私は気付いた。
もしかして、みつおくんの事だろうか。
みつおくんには彼女がいるし
23歳で、たかやくんと同い年だ。

「…はい」

「向こうが酔ってる時でも、思い伝えたら、すっきりするだろうしさ」

「…はい」

「やっぱ会う日の少ないだろうから、伝えな後悔するで」

これはやっぱしみつおくんのことなのかな?
私は静かに頷いた。

「あとはお前次第なんだけどな、…まあ頑張れよ」

たかやくんは笑った。

「ありがとうございます…」

たかやくんの言いたいことが
正直分からなかった。

「今まで出会った中で1番お前が話しやすいかも」

「え?」

いきなりたかやくんが言った。
今まで出会った中なんて…
有り得ないよ…
嘘でしょって思ったけど
内心すごく嬉しかった。

「…そう言ってもらえると嬉しいです」

「まじでだからな。なんか話しやすいわ」

こんなに褒めてもらったの
久しぶり…

「ありがとうございます」

「んっ、んじゃあ行くか」

たかやくんは立ち、にかっと笑った。

たかやくん…

何を私に伝えたかったのか
今でも分からない。
けど、嬉しかったんだ。
今まで溜めてきた思いを
私の変わりに言ってくれたから。