「月島…」
しばらくの沈黙の末、やっと口が開いた。
名前を呼ばれ、先輩の手が頭上に伸びてくる。
はっと気付いた瞬間、わしゃわしゃと髪をかき乱された。
「…っちょ、何するんですか…っ!」
せっかく整えた髪がもうめちゃくちゃだ。
抵抗するも、素早い指の動きに負けてしまう。
「ヒナちゃん」
「え…?」
ピタリと手が止まった。
同時ににこりと優しい微笑み。
「俺もヒナちゃんのこと、大好きや」
続けて聞こえたその言葉。
思考までもが止まってしまう。
「大事な大事な俺の愛弟子。そんなヒナちゃんのこと、大好きや」
繰り返された言葉に、ふと我に返る。
“愛弟子”
…安易に納得できてしまった。


