慌てて窓から下を覗く。 「…ほ…本当にいる…」 ふと顔を上げた先輩と目が合ってしまった。 『おぉヒナちゃん、おるやんか。もう逃げられへんなぁ』 「……」 電話の奥から聞こえる声が、目に映る先輩と被る。 にやりと不敵に笑ったその表情に、わたしの背中に何か冷たいものが走った。 「はい…今行きます…」 …ここまで来られちゃ仕方がない。 通話を切り、部屋から出る。 重たい足取りで玄関に向かった。