拭っても拭っても流れ出てくる涙。
次第に頭がふらふらして立っていられなくなり、その場に座り込んだ。
開いたバッグの口から、ふと見えた黒い物体。
ずっしりと重いそれを取り出し、無意識に構えた。
レンズの向こうが、涙で見えない。
どれだけ技術を教わっても、どれだけ感性を磨いても、こんなに悲しいといいものを撮れる気がしない。
こんなにも狭くヤワな世界を、わたしはずっと見てきたんだ。
…そういえば、前にもこんなことあったな。
先輩のキスシーンを撮らせてもらった日。
自分が思っていた以上に、先輩のことが好きだったんだって、気付かされた。
あの日から、わたしの中で何かが変わったんだ。


