「ヒカル…先輩…っ」
頭に浮かぶのは、先輩と過ごした日々のこと。
それから、想像でしか分からない、現在の先輩の顔。
今頃、焦ってくれているのだろうか。
なんだか申し訳ないことしちゃったかな。
…置き手紙でさよならを告げるなんて。
“実家に帰ります。
長い間ありがとうございました。
月島ヒナ”
そう、小さな紙に書いて置いてきた。
先輩に何も言わずに、勝手に巣立ってきた。
突然消えて心配してもらいたかったとか、気を引くためだとか、そんなんじゃない。
ただもうわたしは先輩の傍にいるべきではないって、そう思っただけ。
そして、引きとめられてしまう前に、逃げてしまっただけ。


