春目前のある日の話
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街の雪が溶け始め、草花が芽を出そうとする3月初旬。
「ただいまーっ!おばあちゃん見て見て!トロフィー!!」
月島ヒナ、この度、トロフィー片手に田舎に帰ってきました。
「まぁまぁヒナちゃん、相変わらず元気だねぇ」
「おばあちゃんこそ変わりなくて安心!」
玄関で出迎えてくれたおばあちゃんと、久々の会話。
小さい頃に両親を亡くしてから、わたしの親はこのおばあちゃん。
わたしがヒカル先輩の元に修行に出るまでは、都心から離れたこの土地で、2人で静かに暮らしてきた。
「そのピカピカ光っとる金は何かね?」
「だからトロフィーだってば、トロフィー!」
「はて。どうしてそんなもの持ってるんだい?」
「えへへ、優勝したの!」
そう。
優勝したんです。


