目の前の優しい笑顔を、必死で瞼の裏に焼き付ける。 最後にこの綺麗な瞳に自分を映せてよかった。 「ミドリ…」 愛しい声でわたしの名を呼ぶ、目の前の人。 苦しいほどに愛した、他人の男。 …ごめんなさい。 もう、彼を返します。 いらなくなった、とかじゃない。 …ただ、こんなの、誰も幸せにならないから。 もう十分、素敵な夢を見させてもらったから。