ある雨の日の話
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「ユカリ!!バスタオル!!」
玄関の鍵が開くや否や、わたしの名前と、繋がらない単語。
「どうしたの!?」
「雨に濡れてもてな、びしょびしょなんや」
言われた通りにタオルを持っていくと、全身水に濡れた旦那様。
「わ、すごいね。そんなに降ってるの?」
「いや、大した雨じゃないんやけどな、スタジオからそのまま走ってきてん」
「え?」
傘も差さずに?
そうきこうと思って、口を開ける。
が、先に出た彼の言葉に、言葉をのみこんだ。
「月島の奴、こんな日に傘忘れるとか、ほんまアホやで」
そう言ってヒカルはヘラっと笑う。
……どうして。
あなたが傘を貸してあげる必要、ある?


