こんな姿のナツなんて知らないであろう、ガラスの向こうの、清楚で柔らかい印象の女の人。
入れ替わる人々に笑顔を振りまく彼女も、きっと胸の内では泣いているはず。
「ミドリさんの涙なんか、見たくねぇよ…」
これ程までに強いナツの想いは、あの人には届かないのだろうか。
こんなに近くで見つめる男がいるのに、どうして見ないふりをするんだろうか。
「ナツ…泣くなよ。お前らしくないよ」
いつも笑顔しかないナツに、そっと声をかけた。
「…はは、…そうだな。悪ぃ」
すぐにぐいっと涙を拭う。
…が、もうそんなの通用しないらしい。
「情けねぇな、俺」なんて言いながら必死に笑おうとしても、流れる涙は止まることを知らない。
…男の涙って、なんでこんなに悲しいものなのかな。


