「ミドリは本当に綺麗だ」 「…奥さんとどっちが綺麗…?」 ふいに囁かれた言葉に、つい意地悪な返事をしてしまう。 奥さんだと答えられるのは嫌だけど、自分だと言われる自信もない。 あるのは、自分だと言われない確信。 「比べたことはない」 …なんて、こんな答え、ズルい。 今比べようとしないのは、彼の逃げ。 家庭とわたし、どちらも選ばない教授は、世の中でいう最低な男。 …だけど。 そんな彼の腕から出ようとしないわたしは、とんでもなく馬鹿な女だと思う。