甘い匂いがふわりと鼻をかすめた。 わたしの頭を支配する。 上品なバラの香りは、彼には似合わない。 「洗剤、変えたのね」 「さぁ。知らない」 そもそも、彼が洗剤になんてこだわるわけがない。 分かっているのに、嫉妬してしまう。 覚悟しているのに、悲しくなる。 何度思ったことだろうか。 ―――“葉山教授が、独り身だったらいいのに”って…