ある日の夕方の話

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「教授。お疲れ様です」



一日の講義が終わり、まっすぐに旧館3階へ。



広いキャンパスの隅に潜むこの部屋は、講義以外の用途はほぼない。



夕日が差し込む小さな空間に、わたしはひとり、毎日通う。





「…あぁ、ミドリ。来たんだね」



わたしの声に振り向く、法律科の葉山教授。



優しい微笑みの中にも貫禄がある彼は、歳は20も上。





「おいで」



柔らかい声でそう言う彼に、“うん”と頷き一歩前へ。



数歩でたどり着いた腕の中にそっと包み込まれた。