「またね、ミドリさん」
「さようなら」
アイスとチョコが入った小さな袋を持って扉を開ける。
「ありがとうございましたー」
カウンターの向こうの上品な笑顔に背を向けて、あたしたちはコンビニから遠ざかった。
……どうせあんたは今、ミドリさんの笑顔を思い返してるんでしょ。
あたしが笑ったって何とも思わないくせに。
「ミカ。お前も彼氏ができたら教えろよ」
なんて言って見せる笑顔は、ズルい。
「あたしに彼氏ができるのは、あんたがあたしを好きになった時だよ」
「ん?」
「…なんでもない」
鈍感男め。
一番近くにいる人の想いに気付かないなんて、あんたやっぱりバカだよ。
―――雪がしんしんと降りだした夕暮れ。
“マブダチ”のあたしたちが手を繋ぐことは、まだない―――。


