「ほらナツくん、そろそろ帰って宿題しないといけないでしょ」
ふと時計を見て言う、カウンターの向こうのミドリさん。
「ミドリさんがあがるまで待ってようかなー」
「ダメ。帰りなさい」
「…ちぇー」
4つも年上の彼女は、まだまだ子供のナツをいとも簡単に制してしまう。
「暗くならないうちにミカちゃんをちゃんと家まで送ってあげなさい」
そう言って今度はわたしに向かってにっこりと笑った。
「ミカは心配ないけどな」
…失礼な。
あたしだって夜道を怖いと思うことくらいあるわよ。
「何言ってんの。ミカちゃんは女の子なのよ」
そうだよ、あたしだって女の子。
…ミドリさんと同じ、女なんだよ。
「…はいはい、分かったよ」
しょうがないな、と、ナツはまた言った。


