「ったく…なんだっていうのよ。あの馬鹿男っ!!」

ああ、もう、本当にむかつく。

全身ずぶ濡れになりながら三センチ程しかない靴のヒールをカツカツと鳴らし、競歩の如くスピードで歩く高崎真白の心の中は荒れ模様どころではない。

地面を撃つような雨の中買い出しに行ったにも関わらず、客の要望も汲めない馬鹿な店員のせいで目当ての商品も手に出来ず、仕舞いにはその店に傘まで忘れて出て来てしまったのだ。

勿論店を出てすぐに気がついたが、取りに戻るなんてかっこ悪いところをあの店員に見られたらと思うと引き返せず、今に至る。

「あの男…もう一発と言わず、もう二~三発入れてやれば良かったっ!!」

苦虫を噛み潰したような表情で握った拳に力を込め、真白は歩みを更に速めた。

辿り着いた先にはオートロック式の高層マンション。

エントランスの佇まいからして高級感漂うそこを臆することなく突き抜け、扉の前にあるキーボードで認証番号を押す。苛立っていたせいか一度押し間違えてしまったが、舌打ちしながら行なった二回目の入力で自動ドアが開くと、運良く一階に止まっていたエレベーターに乗り込み最上階のボタンを押した。