<<翔side>>


今日は終業式。


美鈴のおじいちゃんのために、プレゼントを買いに行く。


「翔〜!」


遠くから聞こえる美鈴の声


「ごめんね、遅くなっちゃって…」


美鈴は汗をふきながら俺に話しかける


「全然大丈夫!俺も今来たとこだし!」


「翔の嘘つき!今来たとこならこんなに汗かいてる訳ないでしょ!」


バレた…


こいつの観察力はあなどれん…


終業式が終わったのは11時。


待ち合わせの時間が11時30分。


俺は11時15分にここに来た。


美鈴が来たのは35分だ。


「もう!こんなに汗かいてるじゃない!一体何分前に来たの?」


美鈴は俺の汗をふきながらたずねる。


「……秘密!」


俺はそっぽを向いて答えた。


美鈴は一瞬不機嫌そうな顔になったが、すぐに笑顔になった。


「じゃあ、行こ!」


美鈴は俺の手を掴みながら「早く、早く!」と、せかすように歩き出した。


無邪気な子どものように笑う美鈴は、妹のようにみえる。


「美鈴、どこまで行くんだ?」


「駅前のデパートだよ。あそこにはいっぱい浴衣が置いてあるんだ!」


「おじいちゃんへのプレゼント、浴衣にすんのか?」


「うん!おじいちゃんが一番好きなものなの!」


美鈴はますますスピードをあげる。


「待てよ、美鈴!」


ついていけないくらい早く歩く美鈴に、俺はストップをかけた。


「あっ!ごめん翔!大丈夫?」


潤んだ上目使いで聞かれた俺は、一瞬理性を忘れそうになった。


「あー!美鈴!!上目使いは反則だぞ!」


「えっ?してないよぉ?」


意地悪そうな笑いを浮かべて言う美鈴に、今度はこっちからやってやった。


「あぁ、そうかそうか。美鈴は俺とデートしたくないのかぁ」


「!?」


「残念だなぁ。俺他の女の子と遊んでこようかなぁ」


「だめー!!!そんなの絶対だめ!」


美鈴は俺の腕にしがみつき、「行かないで!」と訴える。


「やりぃ!俺の勝ち!」


「もう…翔ずるいよ…」