誰々の愛人だとか、どこどこのホストクラブで派手に遊んでいるのを見た、


とか。


もちろん私はそんな噂を信じていないし、信じるつもりもない。


「そんな根も葉もない噂流しやがって。お前らじゃあるまいし!シバクぞこらぁ!」


と思わず口に出しそうにしてしまいそうだったが、私はそれを心に押し留めた。


私だってもういい大人だ。


こんなことで一々怒りを覚えていてはいけない。


しかし


「ウチヤマさん、鞄に白いテープついてますけど、どっかでくっつけてきたんですか?」


べりっとテープをはがしながらイシカワくんが笑った。


は!


私としたことが。無意識にこんなものを付けてきてしまった。


白テープの意味は……私の口からはとてもじゃないが言えない。


「“喧嘩売ります”って言う意味ですよね。さっすがウチヤマさん」


イシカワぁ!読者様にさらっとバラしてんじゃねぇ!






私の事情はさておき、



彼女はどうみても男にだらしないタイプには見えないし、


男の手に縋って生きる女性でもない。





彼女はそう―――


強くたくましく



そして可憐なまでの




ひなげしの花だから。




それに私は誰か他の男と柏木様が一緒に居るところは目撃したことはない。


マンションなんて限られた場所で誰かと一緒に居ることを目撃するの可能性の方が低い。


逆に考えて、このマンション内で親しそうに歩いてる姿を見たら、


かなりの親密度を指し示すことを言う。


そんなことを考えながらも


ある日の金曜日―――


恐れていた(?)事態が起こってしまった。





「お帰りなさいませ、柏木様」


例のごとく頭を下げて彼女の帰りに挨拶をすると、


彼女の隣に見慣れない若い男が歩いていたのだ。