「ねぇ今度いつものお礼にディナーでもどう?」
タナカご夫人は今朝も性懲りもなく私を誘ってくる。
「いえ、お客様と個人的にお会いするのは規則で禁じられているので」
ルールブックが存在してよかった。あの六法全書のように分厚くて重いルールブックに助けられるとは。
「そう、残念ね」
タナカご夫人はさも残念そうに言って、また階上へ上がっていた。
私は助かった。
そのようにして、いつも通り、有名大学病院の教授を勤めているハットリ様、某IT会社社長のハマジマ様、某有名テレビ局の人気キャスター、イナガキ様…etc
私が一生関わりを持たないだろう肩書きのお客様たち
を見送り、
AM07:46
4705室の―――柏木様が降りてこられた。
私に名前を与えてくれた―――
心優しい女性(ヒト)



