「濡れるから」

彼はそう言うと
傘に入れてくれた

それからははなしながら帰った

すごくあっという間で
帰りたくない気持ちで
いっぱいだった

「はい」

そう言って傘を差し出す敬悟

「大丈夫だよ、敬悟が濡れちゃうじゃん」

何を言っても彼は譲らなかった

「女の子は風邪ひいたら困るから」

傘を私の手に持たせて
走っていく後ろ姿

愛おしくて
胸が暖かくなった