瑞穂「つ‥‥着いたっ」
普段なら20~30分かかるところを、今日は……家を出た時間がわからない

少女の通う高校
「夫不高校」(ふぶこうこう)

生徒数300余人。内、女子10数人。女子のいないクラスもある

夫不高校は男子校でも元・男子校でもない
当初から共学なのだが、当時の助教諭が美人ぞろいだったからか
希望者の約8割が男子となり、その
異質な空気に残り2割の女子はことごとく離脱

約40年前
そのむさくるしい状況を変えようと立ち上がったのが理事長の娘、校長の奥方である


グラウンドでは体育の授業でか「うさぎ跳び」をしていた
これは、足腰を鍛えるためではなく「跳びたい」という願望がもたらした副産物である

少女は、ばれないように靴を脱ぎ、靴入れの中のラブレターを焼き捨て、ばれないように階段を上がる

なんとかかんとか気づかれずに教室のそばまでこれた
後ろの戸をゆーっくり開け入室

机に突っ伏しているクラスメイトの斜め下を四つん這いで通り過ぎる

おそらく、誰にも気づかれずに席までたどり着けた
椅子に腰かけ思う

すると

「コラ、不良」
後ろのほうから声がした

瑞穂「!!」

恐る恐る振り向く、と

瑞穂「…ビックリした~。どうも、はじめまして」

座ったままペコリと頭を下げる

「えっヤダ、これって運命??‥‥ってコラ」
瑞穂「なによ」

「なによ。じゃねーっしょ!まずはオハヨ」

彼女は『さくらい あずさ(櫻井 梓)』
この夫不高校における数少ない女生徒兼、少女・瑞穂の数少ない知り合いだ!