わたしは龍之介の想い人である舞さんのことが
今日一日頭から離れなかった。
何を考えてるんだろう、わたしは…。
わたしは、頭をぶんぶんと振って、
そのことを揉み消そうとした。
「…のう。優舞」
龍之介が現代の字を読めるわけないので、
基本、彼は美術の画集などをみて楽しんでるようだ(多分)。
時々、本に挑戦してわたしに質問を投げかけてくる。
「この字は何と読む」
「これは西洋のものか」
とか。
またそれか…と夏休みの宿題のペンをとめて
龍之介を振り向いた。
「なに?」
龍之介はいつになく真剣なまなざしで私をじっと見る。
「……わたしは元の時代への帰り道をさがしたい」
