龍之介のそばに駆け寄って、教科書やテキストをひろう。
「なんでこんなもの、出そうとしたの?」
龍之介は一瞬黙ってから口を開いた。
「未来が知りたかった。…歴史書か何かに書いてあるかと思ってな」
「…未来って……」
龍之介はのぞきこんだわたしの顔に触れた。
ドキンッ…
懐かしげな顔をし、目を細めた。
「舞…」
舞?わたしのことじゃないわ。
頭でも打ったの…
「…龍之介?わたしは優舞よ」
「……ああ」
龍之介はごろんとよこになった。
遠くをみてる。
龍之介はだれかを思い出してる。
わたしの知らない誰か。
「どなた?舞って」
バカ。わたし、なにきいてるの。
龍之介はわたしの方をチラリとみて、ふっと笑った。
「…わたしの想い人。恋人だ。茶屋の娘。わたしがこちらの時代へきて
しまった日、その舞に会おうとして…しかし…」
「…そう…」
あれ、わたしショック?
龍之介が人のものだと知ったらムカつくなんて。
わたし、どうかしてる。
