おばちゃんがつくってくれたのは、野菜炒めと卵焼き。
あと温かい白飯。
「いただきます」
「かたじけない」
店の小さなテーブルで昼食がはじまった。
「いいところだな…」
「わたしが昔からお世話になって…」
龍之介はお腹をすかせているのに、武士の誇りのある食べ方をしていた。
が、急に箸をとめた。
「そなた…寂しいのか?」
ドキッとして答える。
「…!…え、なんで…そんなこと…ありません…けど」
だんだん声が小さくなった。
「そなた、わたしに似ている気がした。
わたしは武家の息子だが、劣等生だったからなあまり両親には
愛されなかったのじゃ…学問学問学問…
武術は得意だったが…
わたしは学問より大切なことがあると思っていて。
いつもひとりぼっちで、寂しくて、愛を求めていた。
そなたの目をみていたらそんな気がした。
…まあ、わたしの勘はよくはずれるからあんまり信用できぬ」
と言って優しく笑った。
なんて優しい笑い方をする人なんだろう。
吸い込まれそうなまっすぐな瞳。
わたしと同じ…この人にはわたしの気持ちが伝わるかも?
とふと思ったが…慌てて首をふった。
信用するな!わたし!
