「ただいま」
玄関まで龍之介がでてくる。
きょうは浴衣だ。
暑いもの。
ダンッ……
ビクッとわたしは体を震わせた。
「あの男はなんだ」
龍之介は帰ってくるなり、わたしを壁におしつけて
逃すまいと手を壁について、わたしを囲うようにした。
わたしはそっと顔をあげた。
龍之介の目は本気だった。
「…ただのパートナーの人よ」
「手をつないだり、顔を近づけたり…?」
だってそれが練習だから。
くだらない、と疲れていたわたしは目をそらした。
「…目をあわせろ」
「だから……んんん!?」
すこし、いらいらして説明しようとしたときだった。
