次の日からは、放課後にだけ部活に顔を出した。
と言っても、女マネは放課後だけって覚えたからであって、これがどうやら普通らしい。
「ちわっ」
「こんにちわ」
部員の人も時々こうやって挨拶をしてくれる。
こんな些細なことがとてつもなく嬉しい。
部活をやってるからこその嬉しさなんだろうな。
そして、あの日以来裕樹と帰ることが多くなった。
「今日も一緒に帰ろうな」
「大丈夫、今日は一人で帰るから。」
「いや、送る。」
疲れてるだろうと思って言ってるのに、全然聞いてくれない。
だから、最初のころはこんな感じの言い争いをしてたけど、今は全然。
むしろ、お互いが何も言わなくても二人で帰ってる状態。
帰ってる間は、今日のスコアのことだとか、明日の練習はどんなものだとかっていうことは話す。
でも、それ以外のことは全く話さない。
なんだか、話しづらくって。
仁のことが頭によぎるときも、口には出さずに頭の中で整理をつける。
結局は家に帰って悩む日々だけど。
どうして、裕樹があんなことを言ったのか。
だって、仁はいい人だよ?
優しくて、かっこよくて、多分誰からも慕ってもらえそうな人なのに。
『神野先輩はやめておけ』っていう言葉がどうしても引っかかる。
タイミングを逃してしまったわけで、なかなか聞きづらい。
そのうちまた、仁の話題になった時にでも聞いてみよう。
そして、それはある日、事件が起きた。
まさか、そんな噂が出てるなんて私は知るよしもなかった。
朝、いつも通り学校へ行くと女子たちの話声が聞こえた。
それは、何かの噂話のよう。
盗み聞きがしたかったわけじゃないけど、でも少し気になって立ち止まって聞いてみた。
その話は、他人ごとではなかった。