「朝は、女マネは来ない。」
「え?」
「岡本先輩と佐藤先輩は来ないよ。」
「それで、私がここに来たこと」
「俺、やることあるから。あと、神野先輩は朝は来ないよ。」
スッと立って私の前から離れて行く下野くん。
シャイ、なわけじゃない。
人見知りって感じでもなさそう。
私、やっぱり何か言っちゃいけないこと言ったのかな。
少し不安な気持ちを胸にしまって、とりあえず教室へ行くことにした。
かといって、こんなにも早くに来てやることなんてなくて。
あ、今日宿題ってあったかな。
そういえば、今日は確か英語があった。
「順番的に、ここ読まされるな・・・。」
実は、ほとんど苦手科目がない私だけど一つだけダメなことがある。
それは、英語の英文を読み上げること。
どうしても、発音がおかしくて毎回恥ずかしい思いをする。
今日は、まだ時間があるし、家じゃこんなこと練習できないしいいチャンスかも。
家で練習をしてて、パパたちに聞かれるのも相当恥ずかしい。
私は、まだ誰もいない教室の中で練習を始めた。
30分くらい経ったとき、廊下で足音が聞こえた。
すぐに読む練習をやめて、鞄の中から本を取り出す。
いかにも、今まで熱心に読書をしていました、という雰囲気で。
「いたいた。」
そこに来たのは、下野くん。
「あれ、どうして下野くんが?」
「いや、神崎が一人で何してんのかなって。暇だろうと思って探してみただけ。」
「下野くんの仕事は?全部済んだの?」
「朝は人数少ないし、あんまやることない。」
「そっか。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人の間に沈黙が続く。
で、なんで?


