「神野ー。満塁にしろよ!」
「いや、俺が出てもまだ二人だから。」
「「はははっ」」」
みんなが笑う。
私も、一緒に笑う。
仁の前の藤井君は、なんと塁に出れた。
しかも、ツーベース。
何なの、この人たち。
目がキラキラしてる。
今が楽しくて仕方ないって言わんばかりに。
勝ちたい。
きっとみんなが思ってる。
勝って、甲子園に行きたい―――
「神野!とりあえず、いけ!」
「打ってけ!」
みんなが仁を応援する。
仁もきっとみんなの声を聞きながら集中してる。
そして、ピッチャーがボールを投げた。
スパッ―――
「トライッ」
「神野、力んでんね。」
「だな。あいつらしくねぇ。」
「俺ら、色々言い過ぎた?」
メンバー間で何やら会議中。
「どうする?」
「なんか言った方がいいか、言わない方がいいか・・・。」
「あ、次投げるぜ。」
仁の顔つきが必死さを伝えてきた。
さっきまであんなにも余裕そうだったのに。
って、余裕なわけないよね。
みんなだってそうなんだから。


