「でも、負けてるんだよ?こんなにも普通でいいの!?」
「負けてねぇよ。」
「お、神野先輩。ネクストっすか?」
「おう。藤井やる気満々。」
「みたいっすね。」
「ちょっと!」
裕樹と話していると仁が入って来て、次の回のことを話してるし。
その前に、やっぱりみんな平然としすぎだって。
「あ、真里亜。ってか、負けてねぇよ?」
「だって、逆転されたでしょ?」
「だな。でも試合が終わってねぇのに負けてない。」
それは、そうだけど。
裕樹もまだ攻撃ができるって言ってたけど・・・。
「俺ら部員は負けず嫌いだし。まだ、この試合には勝っても負けてもない。だからこんな感じなんだよ。」
「・・・でも、もっと悔しがったりした方が力入らない?」
「力みすぎてもな。気ぃ抜きすぎてもダメだけどさ、俺らの中でコントロールしてんだよ。まぁ、悔しくないやつはいないってことは知っとけ。」
周りを見ると、確かにみんな笑ってる。
「次、何点いれっかな。俺らも満塁ホームとか?」
「いいじゃん。狙おうぜ。」
そんな会話も聞こえる。
でも、そんなみんなの背中から伝わってくるような気がした。
『負けたくない、負けてない』って。
あえて口には出さずに、今は試合に集中してるんだ。
すごいな。
今までの試合ではこんなことになったことがなかったから気が付かなかったけど、みんな必死なんだ。
逆転されて、悔しくないわけないよね。
「俺、行ってくる~。」
仁もこの調子だけど、あの夢のために頑張るんだよね。
そっか、みんなまだ負けてないんだから。
私だけ、こんなにもネガティブなんだ。
だったら、この空気を崩しちゃだめだよね。
そっか。
まだ、まだまだこれからなんだ。


