「真里亜、多分この回大きく動くぜ。」

「え?裕樹、なに?」


その時、グラウンドに響いた気持ちのいい音。

それは4番の人がボールを打ち上げた音だった。


そのボールはきれいな弧を描いて空を飛んでいた。

「これ・・・」


「伸びきるな。」

そのボールは、きれいにスタンドへ吸い込まれていった。



その瞬間大きな歓声が起こった。


「キャー!」「うおぉー!」

言葉にならないような叫びも。


それもそのはず。

だって、ここでホームランってことは・・・

「まん、るい、ホームラン。」


「初めて見た、俺。」



私が唖然としている中、メンバーたちも少なからずショックは受けていた。

でも、一人だけ違う人がいた。


「裕樹、なんでそんなに普通にしてられるの!?」

「これが高校野球だからだよ。」


その言葉の意味が分からなかった。

平然とした顔で言う裕樹が信じられなかった。


でも、こんなことを思っていたのは私だけだったみたい。


「8回の裏で大逆転かぁ。」

「結構きついぜ。」


「でも、9回じゃなくてよかった。」

「だな。」


なんでみんな、そんなにも動揺してないの。

だって、逆転だよ?


負けてるのに、どうして?


「真里亜、これからだぜ?まだ、俺らは攻撃できる。相手もだけどさ。」