「ボールツー!」


「なんだ、あの投手。話になんねぇ。」

「まじ、勝負しろよな!」


スタンドからも同じような声が上がる。

「田中」コールから批判コールになってしまった。


一体何が起きているのかイマイチつかめていない私。

後ろを向くとそこには裕樹がいた。


岡本先輩も佐藤先輩もココにはいない。

二人はバスに荷物を詰め込むと学校に残ったから。


みんなが帰ってきたとき用に、たくさんおにぎりを作るからって。

毎回のことだけど。


今までだって、私と裕樹ばかりがこの場へ連れてこられた。

色々とルール、があるみたいだし。


でも、先輩たちが来なくてよかったのかな・・・。

3年生は最後なのに・・・。

今日ここで負けちゃったら・・・ってそんなことは考えない。

「ボール!フォアボール。」


何が何だかわからないうちに田中先輩の打席は終わった。

でも、フォアボールってことは相手のミス?


「真里亜、お前わかってないだろ。」


「え、裕樹。フォアボールくらいわかるよ。」

「そうじゃない。投手のミスじゃねぇってこと、わかってんの?」


「え!?」

ミスじゃなかったらなんなんですか!?


「あれは敬遠って言って、わざと塁に出すんだよ。」

「なんで?」


「あのな、野球部のマネジならこのぐらい知っとけ。」


「・・・はい。」

それから裕樹は私にわかるように説明してくれた。


わかったのは、すごくよく打つバッターを打たせないで最低限のことですませるってこと。

今の状況で打たれて、もしホームランになって2点入るよりもただ塁に出す方が相手チームにとって得なんだって。


勉強になったよね。

でも、これって田中先輩はこの試合で打たせてもらえないってことなのかな。