その後、ママの病室に戻ると看護師さんと話しているママがいた。

とてもゆっくりした口調で、今にも眠ってしまいそうなママ。


「ママ?」


私がママを呼ぶと、ママは私の方を向く。

でも、その目には光がなかった。


「あなたは、さっきの?」

「ママ。」


「まま、って、私のこと?」

「ママ。」


私はただママとしか言えなかった。

思い出してほしくて。


もしかしたら思い出してくれるかもしれないって思ったの。


「真菜、久しぶりだね。」

「あなたは・・・どこかで会ったことが、ありますよね?」


「あぁ。」


きっとママの中に、ママの心のどこかに私たちがいる。

思い出して?ママ。


「真菜、この人たちのことを大切に言ってたじゃないか。」


斉藤さんがママに話かける。

ママは斉藤さんを見て、少し微笑む。


「圭太さん・・・」


「え?」

ママが今言った名前はパパの名前。

でも、目を見て言った人は斉藤さん。


「真菜、僕は聖(さとし)だよ。圭太さんは・・・」

「僕だよ。」


パパがママにそっと話しかける。

でも、ママはよくわからない様子で「なんで?」と言って固まってしまった。


「ママ、パパのこと覚えてない?」

「・・・あなたは誰なの?」


「やだな、ママ。真里亜だよ。」


無理やり笑顔を作ってみた。

でも、私はちゃんと笑えてた?