「そんなに落ち込むなよ。」
「でも、私っ・・・」
お母さんの声が震えている。
私は、リビングへは入らずにしばらく二人の会話を聞くことにした。
盗み聞きがしたいわけじゃない。
ただ、どうしてもきになったから。
「真里亜も大変なんだよ。」
私・・・?
「私、真里亜に何を、して、あげたらいいのっ、か、わからなくてっ」
「このままでも十分じゃないか。由季(ゆき)は真里亜のお母さんになろうと頑張ってる。」
「何もできてないじゃないっ。」
「そんなことはないって。」
何の話なの?
私の話?
どうして、私の話をしているの。
私の、お母さんになる?
ふざけないでよ、私のママはママだけなんだからっ。
「お姉ちゃん・・・」
そのとき私の背後から、か細い声が聞こえてきた。
その声はもちろん真咲の声。
「なに。」
「お母さんはね・・・」
「学校行く準備するから。」
駆け足で自分の部屋へ戻る私。
本当はあの話の続きを聞きたかった。
でも、なぜだか聞きたいのに、聞きたくないと思う自分もいた。
そのとき、ちょうど真咲が来てくれたから私は部屋に戻った。
お母さんとパパの話はなんだったのだろうか。
気になるけど、もう気にしないようにしよう。
そして、私は学校へ行く準備を始める。


