クローン(CLONE)

道が分かるのだろうかなどと心配する必要が無い。
これまた、一年前に車一台に尽きカーナビ一台を付けることが義務ずけられた。
大統領制になってから、まだ一年。多分、あの夫婦は結婚したてだろう。
小学校の遠足のようにとても仲が良いように見えた。
すると、スピードをだして、タクシーの先頭にたった。
どんどん追い越し、小さくしか見えなかった。
すると、見えないくらい小さい車が何故か、だんだん大きくなっていく、後もう少し。
あの夫婦が車から降りて、何かしている。
その物体は何か変な形をしている。人の形をしているようにも見える。
警告音を鳴らすが振り向かない。まさか、と思ったら、そのまさかだった。
あの夫婦はカメラ片手に血を流し、亡くなっている。
もう、何も居なかったが、多分、TCNにやられたのだろう。
道に血が赤く染まっている。目を背け、その場を通り抜けた。
何故、あの夫婦は車から出てしまったのだろう?知らなかったのだろうか?疑問が次から次へとわいてくる。あの夫婦は12時40分にこの世の中から魂を奪われた。
あの夫婦の時計が一生動くことが無い。
でも、あの時俺らが先頭を切っていたら、あの夫婦は助かっていたかもしれない、しかしその変わりに俺らは死んでいただろう。
時の流れは本当に不思議だ。進みたくなくても勝手に進んでいる。
自ら望まなくても。これで今日だけで2回目、すべて洗い流したかった。

でも、これがまぎれも無い現実なのだ。

予定より少し早く、あと20分で成田に着く、ナビがそう言っていた。
うれしいという気持ちがいっぱいだったからか、今すぐ外に出てジャンプしたい気分だった。
成田と言えば、あの飛行機がたくさん飛んでいるような光景に包まれているそう想像してしまった。
幻覚ではなく本当であると信じて、あと20分ですべてが明らかになると思うと久しぶりにワクワクした気持ちになった。
子供ならではの楽しみ、コーラとポテトチップスで乾杯でもできるかと。
そう思い、トイレ休憩を取る事にした。
先生がトイレに向かっているので、俺らはアヒルのように後ろに続いて、テクテク並んで歩く。少し隠れ気味で・・・・・。先生に見つかりませんように、先生に見つかりませんようにと心で祈りながら近づいていく。