クローン（CLONE）

なんで虚しくてさびしい社会になったのだろう。
そんなことを考えているうちに自然と心の中からいらだたしさが少しずつ納まっていった。素朴な疑問。
でも、それに答えられる人は一人も居ない。
ずっとさっきから車に揺られているだけ、日本を救ったて別に良い事など一つも無いがせめて裕也やあゆかや先生には助かって欲しい。
時計は止まることなく刻一刻と時を刻んでいる。
１２時。それと同時に焦りを感じる。視線をそっと外側にずらす。
すると、まだ街を疲れたためか歩いている人たちがいる。こっちを向いている。視線が合ってしまった。

「助けてください。助けてください。この子だけでも救ってください。」最後の希望かのように肺の底から声を出している。
助けたい気持ちは山々だったが、タクシーは四人乗り、あと一人は乗ることが出来るが、あれは四人家族だ。当然乗せることなど出来ない。
心が痛んだが仕方ないと自分に言い聞かせた。
俺らもこのタクシーがきてくれた事で助かったが、もしタクシーを見つけることが出来なくて歩いて行く事となっていたら、今頃俺らは居なかっただろう。
やっと高速道路に乗ることが出来た。
あと、１時間で成田に着くとナビは予定している。
何故そんなことが分かるのだろうが不思議だったが、雨が弱まってきたため、外を覗いていた。すると、光が差し込んでくる。
これで、さっきよりもスピードを出すことが出来た。
でも、高速からの景色は明るいものではなかった、人がいるように思えない。
いつでも、朝はやってくる、それと同じように夜もやってくる。
かつては夜のほうが星や町の景色が綺麗だから好きだったが、今は夜になっても星の輝きしか、明かりなど無い。
それより、成田に着いても助かるのだろうかその不安がいっそう強くなって来た。
先生も顔では出さないが心の中では同じことを思っているに違いない。
すると、一台の車がバックミラーに映っている。
ものすごいスピードで近づいて来る。
車のナンバーが、福井県越前市だった。
多分旅行を楽しみにやってきたのだろう、でも、突然あのような出来事になってビックリしているだろう。