あの頃のあたしは敦なんか関係なしに、きっとバカだったんだ。
自分がどんなバカなことをしてるのか、わからないくらいバカ。
敦のせいにして、あたしは逃げてただけなんだ。
「涼二、バカなあたしとずっと一緒にいてください」
涼二はあたしの頭を抱き締めた。
敦からは、いつも煙草の匂いがした。
涼二からは爽やかな甘い匂いがした。
今この瞬間からあたしはこの匂いが大好きになった。
「あたりまえ」
「涼二、涼二なんの香水つけてるの?」
あたしの突然の質問に
(話変わりすぎだし笑)
涼二は大きな目をぱちくりさせてから、じぶんの腕に鼻をよせた。
「臭い?」
「逆。すごくいい匂い!!あたしも涼二と同じのつけたい。涼二と同じ匂いになったら、涼二と1つになれる気がする。」
やばい。あたし重いって思われたかな?
あたしは唾を呑み込んだ。
涼二は少し考えてから微笑んだ。
「俺もこの匂い好きなんだ。真優が気に入ってくれてうれしいよ。その気持ちもうれしい。だけど、これ男物だし、たしかペアの女の子用のがあったんだ。今度プレゼントするよ」
また目が潤み出した。
だめだあたし。涼二と会ってから涙もろくなってる。
あの頃は心が冷えきってて涙なんかでなかったし。
あたしはこくこくと頷いた、
「確か、来週真優誕生日だろ?そんときな」
あたしはさっきの涼二以上に目を見開いた。