「故障ね…」



後ろにぴったりとくっついて離れない梓を見て溜息を零す。

ひとつも表情を変えないロボットの梓の頬に触れてみて、そういえば本物の梓にもこうして触れたことはあっただろうかと記憶を巡らせた。


「ごめんね、さっき、痛かったよね」


「何のことでしょうか?」


「覚えてないの?」


「何のことを言っていますか?」


「いや、さっき、ほら私が足で蹴っちゃって」


「すみません、覚えていませんでした」


「忘れたってこと?…それも私のせいだよね、多分。ごめん」



手を離し、一時その顔を見つめていた。
数秒毎に瞬きをして、私が黙ると、その視線は定位置のように地面へと向かう。



「ねえ、あなたは笑ったり、怒ったりしないの?」


私が声を発せれば、目を見開き、また私を見てそれに応える。

ロボットの梓は無理やり口角を上げ歯を見せて強引に笑顔を作ってみせた。



「もしかして、笑ってる?」


「はい、一応」


「そう」


「何か、おかしいですか?」


「うん。おかしい。でも大丈夫、あなたがロボットだってわかってるから」



そう言って歩き出す私の後ろを歩く、ロボットの梓は少し早足で私の隣を並んで歩き出した。