深く考えれば考える程、戻りたいという想いに霧がかかり、前途を悲観してしまう。


この数分のうちに今年1年分の溜息をまとめてついたような感じだ。


希望が濁り、確かな想いに躊躇いを齎す。


戻ってきたお爺さんに笑顔を向ける余裕もなく、私は憮然と真っ白な壁を見つめていた。




「もう一度、名前を聞いてもいいかい?」



「え?ああ、守田衣奈です」



そう言うとお爺さんは首を傾げ眉間に手を添える。



「どうか、したんですか?」



暫く考えた後、お爺さんは大きく息を吐き出した。





「君のデータがないんだ」