それからお爺さんは、自身の話を聞かせてくれた。
戦争で妻子を亡くしたお爺さん自身も、国に携わる仕事をしていなければ、妻子のロボットを造っていたかもしれないと。
長年持っていたと思えるシワだらけになった一枚の写真を、お爺さんは大切そうに胸ポケットにしまっていた。
「初めて、ロボット破棄する現場を視察しに行ったときにね、ちょうど私の妻と息子のような親子のロボットがいたんだ。母親のロボットは子のロボットをきつく抱きしめ震えていた。その光景を見て初めて、自分の通した法律に疑問を持ったんだ」
そしてお爺さんはこう続けた。
「見るに堪えず外に出るとね、その母のもう一人の子が外で暴れていたんだ。彼女はまだ7つで、父親はヒューマノイド規制法違反で逮捕され、どう調べたのかそこに一人で来たようでね。…私に言うんだよ。『お母さんとお兄ちゃんを殺さないで』って。人間を守るために決めたはずなのに、私の目の前にいる人間は泣いているんだ。苦しんでいたんだ…。急いで戻って、中止させようとしたんだけどね、そこにあったのは物と化した母子の姿だった」
お爺さんは何度も天井を見上げながら、鼻をすすった。
「合わせる顔なんてないよ。私は人殺しと変わらないんだ。すぐに原案を見直し再提出したんだが、議員には反対派が多く通らなかった。何度もそれを繰り返しているうちに私を疎ましく思った連中はついに私をその世界から追放してね。結局、何も変えられず、今日まで生きてきた。私はこれから先の未来でも、人の心を殺した人間として人々の記憶に名を残すしかないんだ」
こんな時、ほかの人ならなんと言うのだろう。
幼稚で、凡愚な頭を巡らせても言葉一つ浮かばず、私はただ、お爺さんの話を隣で聞くことしかできなかった。


