「すまない」
「え?」
「その法律を通したのは私なんだ。ああ、いや、今では法律ができるまでの仕組みも昔とは大きく違ってね。ヒューマノイド規制法については、とにかく混乱を抑えるため早急に事を進めなければならなかった。そんなこと、言い訳にすぎない事は充分わかっているんだが。私のせいで、こうして苦しむ人がいるだろうなんてことは、あの時の私には想像できなかったんだ」
「お爺さんのせいではないですよ」
「いいや、私のせいなんだ。実在した、実在する人間に類似したヒューマノイドを造った場合、それは破棄されるとしているんだがね。人格を、心を持ったロボットは最早人間そのもの。身体的苦痛を伴うことはなくても、精神的な負担は私たち人間と変わりないんだ。それを私は無視して、機械だからと物扱いしていた。戦争でわが子を失った親は子をロボットとして再生させ、そして私のせいで二度も失い、二度も苦しんだ。それがダメならと、今度はトラベラーを買収し、過去から連れてくることを考えた。君も、私のせいで苦しんでいる一人に過ぎないんだよ」
「…でも、私にはそういう人はいませんから」
お爺さんは濁った表情のまま顔を上げ、「そんなことはないだろう」とぼそりと呟く。


