「…そのマシンで人を運ぶことは?」
心の内の声が表に出てしまっていることに気づくまで、数秒かかってしまった。
あっけらかんとしたお爺さんの顔を見て我に返り、なんでもないです、と咄嗟に否定した。
「人を運ぶことは不可能ではない。そのマシン自体、現に人を移動させているんだから。ただし、定員は一人なんだ。だから、もし過去の人間を未来に連れてくるとすれば、未来の人間がそこに残らなければならなくなる。現にこれまで過去から来た人がいるんだ、稀にだけどね」
例えばこのお爺さんの話がすべて事実だったとして、私がタイムマシンとやらでこの世界に運ばれてきているのだとしたら。
そこに一体どんな理由があるというのか。
19歳の、フリーターで、希少価値もない人間を未来に運ぶ理由など、思いつかない。
「その後の話は無用かい?」
呆然とする私を見て、お爺さんは空のカップを持ち立ち上がる。
「あ、いえ」とうろたえていると、お爺さんは私にくれた紅茶を手に取りその喉に流し込んだ。


