「しかし2017年」



これまでの声とは違い、お爺さんが声のトーンを下げてそう言うと、辺りは一瞬にして炎に包まれる。


「政府はついに戦う道を選ばざるを得ない状況になった。多くの国民が反対し、どれだけ声を荒げても、その判断が覆ることはないまま、戦争は始まった。この戦争で、日本の人口は6千万人近くまでに減少したんだ」


誰が撮影したのか、今、私の前では小さな男の子が泣いている。



泣いて助けを求める男の子に手を伸ばそうとしたその一瞬の隙に、辺りは煙で覆われ、映像は一度サンドストームに切り替わり、また新たな街を映し出す。



「一部では核兵器も使われた。世界中で多くの犠牲者を出したこの戦争を、人々は第三次世界大戦と呼んでいる。…勝敗ではなく、多くの涙と声で、この戦争は幕を閉じ、皆武器を捨て、誓った。二度と戦争はしないと」



あらゆる国の人々の合掌する姿が映し出されている。


悲惨な街並みに向かい消えてゆく人々。


平野と化した街にあるのは、儚い笑顔。


昔、学校で教わった戦争というものが、自分の世代で起こるということは些か実感が湧かず、目の前に映るその映像をまるで映画のように、私は余所目で見ていた。



本来なら、私がいるはずの未来のことであるというのに。



あまりの恐怖からかそのように自動的に心が回避しようとしているのだろう。



「皆多くの物を失った。家族や恋人、住む家や食べる物。それが整うまで長い年月がかかったが、誰一人として争いを起こそうとはしなかった。皆、その頃には充分にわかっていたんだ。いや、最初からわかっていたはずなんだ。戦争なんかしなくても、皆、ずっと前から。だから、再確認させられたと言うほうが正しい。暴力から生まれるものは何一つとしてなく、あるとしてもそれは悲しみと哀れさだけで、例え勝利を得たとしても、そこにあるのは虚しさだけだと。分かち合い、助け合い、そして遺された人々が思い出したのは、真の愛と強さだったと、そう、私は思っている」