「さあどうぞ」
紅茶の香りが密室に充満してゆく。
手渡されたカップから手に伝わるぬくもりが、逸る気持ちを落ち着かせてくれた。
お爺さんは「あちち」と言いながらも、音をたててそれをすすり、髭についた水滴を丁寧にハンカチで拭う。
「さて、君が知りたいのは…」
「2012年。ああいえ。2013年から今日までの事を教えてほしいんです。おおまかなことで構いませんので」
「そうだね。2012年と言えば私が30…32の頃か。あの頃私は議員―」
そこまで言うとお爺さんははっとして、強付いた髪を掻き、
「君が聞きたいのは私の過去じゃなかったね」
と、もう一度カップを口へと運んだ。


