そうして私は念願叶ってここにいるわけなのだが。


どうしてこうにも、沈黙が続くのだろう。




可笑しい。




昨日まで、話したいことも、聞きたいことも山のようにあったはずなのに。



今はそれが微塵もなく消えてしまい、ただ胸の音だけが暴走している。



いつの間にか、男らしくなったその姿のせいだろうか。



私と然程変わらなかった身長は10センチほどの差が開き、細々としていた体のラインも高校生の時よりも少しがっちりしたように見える。



相変わらず綺麗な顔立ちではいるが、幼い頃の面影は僅かにしか感じられない。




すぐ目の前にいるというのに、なぜ、とても遠くに感じてしまうのだろう。


私が梓を見ていても、梓はその目を私に向けてくれない。




私は、彼に想いを伝えるより、背を推すべき存在なのだろうかと弱気になる。



きっと梓は、私を恋愛対象として見てくれていないのだ。




もしかすると私が彼の傍にいられる条件は、幼馴染という枠の中限定と運命づけられているのかもしれない。