わたしはためしに、ドアの取手を回してみた。


すると、取手はくるりと回り、ドアが開いた。


鍵が閉まっていないとは、何て物騒な・・・。


まぁ、泥棒が入っても、学生の部屋から盗む物なんて、あまりないのかもしれないけど・・・。


そう思いつつ、わたしはドアの内側に入り、なかの様子をうかがった。




部屋の中は静まりかえっている。


やっぱり剛はいないようだ。


チョコレートは、テーブルの上に置いておくことにしよう。



「おじゃましまーす。」


小さな声でそう呟いて、わたしは部屋に上がった。


そしてテーブルのそばまで行きかけたとき、わたしはいないと思っていた剛の姿を見つけた。


剛はソファーに座ったまま、ぐっすり眠っていた。



わたしはチョコレートをテーブルの上に置くと、足音をたてないようにして、剛の眠っているソファーのそばに行った。


脱ぎ捨てられたジャケットが、まるめられて絨毯の上にころがっている。


わたしはジャケットを拾い上げると、軽くたたんでソファーの上に置いた。


それから眠っている剛の寝顔を、こっそり見た。