エプロンをして台所に立つと、さっそく鍋でチョコレートを溶かし、生クリームを加えてまぜる。


それから星型の型に流し込んで、チョコレートを固める。


わたしは残りのチョコレートで、日頃の感謝として、お父さん用に四角いチョコレートも作ることにした。


お父さんはどう見ても、星型のチョコレートを喜ぶキャラじゃない。


きっと星型よりも、四角のほうが好きだろう。



星型のチョコレートと四角いチョコレートは、なかなかいい感じで出来上がった。


特に星型のほうは型を取ると、きれいな星の形になっていて、食べるのがもったいないくらいだ。


あとはチョコレートをラッピングして、渡すだけだ。




バレンタインデーの日の夕方。


わたしはきれいにラッピングしたチョコレートを持って、剛の住むアパートに出かけた。


剛には前もって、行くことは連絡していなかった。


突然、チョコレートを渡して、驚かせたかったからだ。


多分この時間帯なら、剛は部屋にいるだろう。



自転車をアパートの前に止め、わたしは剛の住まいへと向かった。


ドアの前までやってくると、本命を渡すわけでもないのに、どうしてこんなに緊張しているんだろうと思いながら、軽く深呼吸をし、ベルを鳴らした。


誰も出てこない。


剛お兄さん、いないのかな・・・。


どこかに出かけてるのかな・・・。