「出産を希望されない場合には、なるべく早めに中絶したほうが、母体への負担が少なくなります。」


医者はわたしたちに説明した上で、最後にそう言った。




中絶――。


その言葉を、自分の耳で聞く日が来るなんて・・・。




わたしとお母さんは病院を出てから、一言もしゃべらずに家に帰った。



重苦しい気持ちで、胸が苦しかった。




今夜、お父さんが帰宅したら、妊娠のことを話さなければならないだろう。


そして近いうちにかっちゃんにも・・・。




わたしは自分の部屋に上がり、ベッドの上に腰かけた。



わたしは中絶しなければならないのだろうか。



おなかにそっと手を当てた。


病院で見た小さな赤ちゃんのエコー画像が目に浮かんだ。