エルクは顔を上げ、アデルを覗き込む。
そして、指先でテーブルを何度か叩いた。
「これ、読んでみろ」
アデルは微かに首を傾げたが、エルクの言葉に素直に従う。
「オネストでの山賊討伐に、メルディから一小隊を送る。ライラが隊を率いていくので、宜しく頼む。デモンドでも被害があるというため、早期解決を望む。メルディの到着を待ってもらえると有り難い」
「イアンにしては珍しく長い」
エルクは書状の上に指を滑らせ、文章をなぞる。
「いつもなら……ここまでだ」
エルクの指が、最初の丸で動きを止めた。
用件のみの、簡潔な一文であった。
