すまない、と呟かれたエルクの声を、アデルは聞こえないフリをした。
そしてアデルは、姿勢を正し座り直す。
「ところで……話は変わりますがアルノム王の容態に変わりはないようです」
「……そうか」
アデルからもたらされた報に、エルクは嘆息する。
温かな笑顔の幼なじみを思い出し、目を伏せる。
心優しいミーナのことだ。
周囲に心配を掛けぬように気丈に振る舞っているのだろう。
彼女の心は、さほど強くはないというのに。
苦々しげに眉をしかめるエルクを見つめ、アデルは視線をテーブルに落とす。
今後のオネスト王国の進むべき道は限られている。
それをエルクに言うべきか、言わざるべきか。
アデルには判断が付かなかった。
