アデルの打算は彼が言う通り、彼の世渡り術なのだろう。
だがエルクが頼ることを止めれば、アデルはもっと楽に生きることが出来るはずだった。
エルクは眉間に深いしわを刻み、押し黙る。
その様子に、アデルは苦笑してみせた。
「また変なことに頭を悩ませていますね」
「変だと……!?俺はお前を……」
エルクの口元に、アデルの人差し指が押し当てられた。
「貴方はシェーダをよりよくすることだけに頭を使ってください。私に遣う気なんていりませんよ」
いつもそうやって甘やかす。
喉まで出てきた言葉をエルクは堪えた。
甘えているのは他でもない自分自身だったから。
