エルクもまた、アデルを頼るが贔屓をしいい役職を与えているわけではない。
本当は実力も指導力もあるアデルを騎士団長に任命したいが、口煩い貴族たちを考えると難しいことであった。
エルクは知っていた。
メルディ国でアデルが「将軍」と呼ばれていることを。
シェーダ国には将軍という役職はなく、軍隊は騎士団長が最高職である。
その下に小隊長がいる。
アデルは、その小隊長だ。
エルクは一度、何故アデルを将軍と呼ぶのかイアンに尋ねたことがある。
そのとき、イアンは質問の意味がわからずに首を傾げていた。
『軍を率いて支持を出しているのが彼だから、てっきりそうかと……違うのかい?』
その一言は、実力主義の国柄を顕著に表していた。
